2019/10/28

やっぱり森里海連環? (フィールド科学教育研究センター教授 徳地直子)

 被害妄想かもしれないが、森里海連環学はいつまでたっても世間に浸透しない、ということがひそかにささやかれている(ような気がする)。ということで、ここでは皆さんと行っている現在の活動を再度ご紹介させていただき、これからについて考えたい。

多様な主体との連環、いや、連携 
 森里海連環は、誰か特定の人たちにとって必要な考え方ではない。今はやりのSDGs (Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)にもあるように、誰一人取り残さない持続可能な社会に不可欠なものである。そのため、私たちは多くの方と森里海連環の考え方を共有しようと試みている。例えば、現役世代との活動(京と森の学び舎)、次世代との活動(森里海ラボ)、シチズンサイエンスとしての活動(アマゴの健康診断)、また先だってこのTOPICSで紹介されていた地域との活動(近江八幡)などなどがある。

現役世代との連携 -京と森の学び舎―
 これは言わずと知れたユニットの赤石大輔先生が指導してくださっている現役社会人(20~40代)に向けた、森里海の連環を講義で学び、フィールドで体感する活動である。2018年12月にはじまり、先日ほぼ毎月の講義(5回)とフィールド実習(3回)を終了し、18名の修了者、森里海コミュニケーターが生まれた。18名というと数が少ないようだけれど、会社員、保育士、画家、イラストレーター、DMO職員などなど非常に多様な方々で構成されていて、興味の範囲も非常に幅広い。しかも、皆さんはすでに森里海連環の再生に向けた活動に取り組まれている。非常に頼もしい仲間である。現在2期生を募集しており、さらに仲間を増やす予定だ。

高校生との連携 ―森里海ラボー
 これまで森里海連環について多くの方と考えようと試みているが、まだまだ世間には十分伝わっているとは言い難く、しかし、伝え続けなければ元の木阿弥である。そこで、次世代の高校生と森里海の連環について考え、また連携した高校とのワークショップなどを行っている。

シチズンサイエンスとしての連携 ―アマゴの健康診断―
 和歌山研究林に源流のひとつがある有田川は、アユやアマゴの釣りを楽しむ人が近隣の大阪などからも多く訪れる。アユもアマゴも稚魚を川に放流して、大きくなったものを釣るのが主流であるが、養殖されたものと元々その川にいるものでは遺伝子が異なる。遺伝子はこれまでの長い長い時間にその場所での数えきれない経験を含んだ長大な記録であり、将来への可能性でもある。そこで在来のアマゴは有田川のどこに、どれだけいるのか、などを明らかにしようと、毛鉤釣りの倶楽部と一緒に調査を行っている。調査を通じて、なぜ在来アマゴが重要なのか、アマゴが川と海を行き来する意義から森里海の連環について考えている。

そして、これからの連携 
 現在私たちが行っているプロジェクトでは、陸の在り方が海の環境や生産力にどうつながっているかを明らかにしようとしている。一方、最近の自然災害の被害がこれまでになく甚大であるのは、生態系をコンクリートで管理できると過信したことが原因の一つであると多くの人が感じ、森里海の連環を断ち、生態系を脆弱にしてしまったことに目が向き始めている。引き続き、森里海の連環について得られた知見を基に、私たちがしなければならないことをともに考え、活動していきたい。

学び舎での講義の様子
高校生とのフィールド合宿
シチズンサイエンティストとのアマゴ調査
公開シンポジウムでのグループディスカッション
新プロジェクト
「RE:CONNECT」
スタート